アプリを入れたところで、手が止まる。何年分もの手帳を前に「これをどうやって移すのか」と考えているうちに日が暮れて、結局また紙に書いてしまう——。
紙の手帳からデジタルへの移行がうまくいかないのは、意志が弱いからではありません。移行の最初に決めるべきことが、決まっていないからです。決めるべきことは1つだけで、それは「過去のページをどうするか」。ここが宙に浮いたままだと、初日の作業がいつまでも終わりません。
この記事では、その1つをどう決めるかと、決めたあとの手順を整理します。
移行がつまずく3つのポイント
1. 過去のページをどうするか決まらない
何年分もの記録を前にすると、「全部入れるのか、一部だけか、どこから区切るのか」を考え始めます。これは答えの用意されていない問いなので、考えるほど決まりません。決まらないまま手が止まり、移行そのものが先送りになります。
2. 全部入れ直そうとして、初日で終わる
「せっかくだから全部デジタルに」と始めると、最初の数ページで気力が尽きます。手帳は書き溜めた量が多いほど価値があると感じるものですが、その量がそのまま移行の作業量になります。移行の初日にいちばん重い作業が置かれる形になっているので、続きません。
3. 紙でできていたことが、アプリのどこにあるか分からない
来週の予定を見たい、先週のあの日に戻りたい——紙ならページをめくるだけだった動作が、アプリではどこを触ればいいのか分かりません。数日は我慢できても、「紙の方が早い」と感じた瞬間に手が紙へ戻ります。
過去のページは持っていかない
結論から書きます。過去のページは、移さなくて構いません。 理由は3つあります。
1. 移す手段がそもそも無い。 紙に書かれた内容をそのまま取り込める機能を持つアプリは、ほとんどありません。結局は手で入力することになります。
2. 手間と価値が釣り合わない。 何年分もの記録を手入力する時間は、数十時間の単位です。それで得られるのは「過去が検索できる状態」ですが、次の理由でその価値はあまり大きくありません。
3. そもそも見返さない。 過去の手帳を実際に開いた回数を思い出してみてください。年に数回、あるいは数年に一度ではないでしょうか。使う頻度が極端に低いものを、いちばん手間のかかる方法で移す理由はありません。
つまり、移行とは過去を持ち越すことではなく、今日から始めることです。
そして、紙の手帳を捨てる必要もありません。そのまま保管しておけば、見返したくなったときに開けます。移行するかどうかと、記録を手放すかどうかは、別の判断です。 混ぜて考えると、どちらも決まらなくなります。
今日から始める移行の手順
手順1. 今日とこれから先の予定だけを入れる
入力する範囲を「今日以降」に限定します。過去は見ません。これだけで初日の作業量が数十時間から数十分になり、その日のうちに移行が完了します。
手順2. 繰り返す予定を最初に登録する
移行の山はここです。毎週の定例、毎月の支払い、毎年の更新——繰り返し起きることを最初に登録しておくと、以降の回は自動的にリストへ並びます。
紙では毎回書き写していたものが、一度の設定で済むようになる。ここがデジタルに移ることで得られる最大の利得なので、最初に効かせます。
手順3. 紙と並走させない
不安なのでしばらく紙も併用したくなりますが、二重管理は移行を確実に殺します。同じ予定を両方に書くと、どちらが正しいのか分からなくなり、やがて「確認が早い方」だけが残ります。移行する日を決めて、その日からは片方だけにする。紙は保管に回します。
SpicaGF の場合
紙でやっていた動作が、アプリではどの操作に置き換わるのか。3つ目のつまずきを具体的に潰しておきます。
先の予定を見る。 月次ビューでカレンダーを左右にスワイプすると、前の月・次の月へ移動します。紙のページをめくるのに近い操作です。今日の日付は丸く塗られているので、いま見ているのがどのあたりかがすぐ分かります。

今日に戻る。 日次ビューの日付ナビにある「今日」をタップすれば、どの日を見ていても今日へ戻ります。栞を挟んだページを探す手間はありません。
繰り返す予定を登録する。 タスクの「リピート」から、毎日・毎週・毎月の周期を設定できます。毎週なら曜日を、終わりがあるなら終了条件も選べます。一度登録すれば以降の回は自動的に並ぶので、手順2で「移行の山」と書いたところが、この設定ひとつに置き換わります。(手順は繰り返しタスクを設定するで解説しています)

なお、SpicaGF にも紙の手帳を取り込む機能はありません。このアプリを作った開発者自身も、四半世紀分の手帳は移さず、そのまま保管しています。移したのは、今日とこれから先だけです。
移行したあと、その日のタスクを何のために積むのかについては月の目標が「毎日のタスク」に落ちない理由と、つなぐコツで書いています。
SpicaGF は App Store で公開中です。何年分もの記録を前に立ち止まる毎日から、今日とこれから先を組み立てる毎日へ——そんな計画術を、ぜひ試してみてください。